落語がどのように異文化間の架け橋となり、国際的なエンターテインメントとして成功し得るのかについて:社会学的・学術的観点からの研究

桂 三輝/Katsura Sunshine
吉本興業株式会社
最終目標と中期計画
最終目標
✅ 本研究で得られた知見は、学術論文としてまとめ、最終的には英語および日本語での書籍出版を目指す。
✅ 落語は日本文化の宝。政治、宗教、偏見など、人々を分断する要素を排し、あらゆる観客を一つにする芸術である。日本では、祖父母から子供まで三世代がともに鑑賞し、笑いを分かち合う伝統がある。
✅ 私の生涯の使命は、この日本文化の至宝である落語を世界へ広めること。そして今、世界はまさにこのような芸術を必要としている。
✅ 今後3年間、単なる落語公演の継続にとどまらず、落語がどのように異文化間の架け橋となり、国際的なエンターテインメントとして成功し得るのかを、社会学的・学術的観点から研究していく。
研究概要
落語は400年以上の歴史を持つ日本の伝統的な話芸でありながら、言語や文化を超えて楽しまれるという、驚くべき普遍性を備えた芸術である。
私(桂三輝)自身の経験として、例えばカナダ出身の私が、同じ英語を話すイギリスのコメディ番組を必ずしも理解し、楽しめるとは限らない。にもかかわらず、400年の歴史を持つ日本の落語が、なぜこれほどまでに普遍的な魅力を持つのだろうか。
中期計画(3年計画)
本研究では、この「落語の奇跡」を3つの視点から探究する。
・これまで17年間、世界各国で英語落語を演じてきました。特に過去5年間はブロードウェイにおいて継続的に公演を行っている。本研究では、その経験と知見を整理/分析し、英語による落語の可能性をより体系的に検討する。
・具体的には、今後3年間で月2本の新作を発表し、計36席の英語落語を演じる計画を立てている。
・この演目には、古典落語(古典落語)だけでなく、私の師匠である六代目桂文枝による創作落語(創作落語)も含まれる。初年度には、1972年に昭和天皇の御前で演じられた「お神酒徳利」や、「人情噺」の名作「文七元結」など、日本落語史において重要な作品も英語で上演する予定。
・これにより、英語での落語公演が持つ可能性と限界を検証し、日本国外における落語の新たな発展の可能性を探る。
・私はこれまでフランス語でも落語を演じてきたが、今後さらに中国語、ヒンディー語、スペイン語での公演を計画している。
・本研究では、新たな言語を学術的に習得し、その知識を落語の舞台に適用する過程を詳細に分析。 ・特に、落語を各言語のネイティブスピーカーに届ける際、言語的/文化的な壁をどのように乗り越え、落語の本質や笑いの構造をどのように翻訳/適応させることが可能かを探求する。
・現在、二名の弟子を持ち、今後さらに弟子を迎える予定である。
・現在の弟子のうち、一人は台湾系アメリカ人で英語と中国語が堪能ながら日本語は学習中、もう一人は日本人で英語が堪能である。
・彼らの育成を通じて、異なる文化的背景を持つ人々に落語を教えるプロセスを研究し、多言語での落語公演を目指す弟子たちに求められる教育方法を確立したいと考えている。
経歴
- 2008年
桂三枝(現・六代 桂文枝)に入門
日本の落語史上二人目の西洋人落語家、上方落語では初の西洋人落語家
- 2013年
カナダ・日本 文化大使に任命
スロベニア・日本 友好大使に任命
北米落語ツアー開催
- 2014年
落語ワールドツアー開催
- 2017年
ロンドン・ウエストエンドにて落語公演デビュー
ニューヨーク・オフ・ブロードウェイにて落語公演デビュー
- 2019年
「Rakugo on Broadway」開幕(2025年現在6年目継続中)
G20大阪サミット・歓迎レセプション司会
- 2023年
「徹子の部屋」ゲスト出演
カナダ・モントリオールにてフランス語落語を公演
- 2024年
初の弟子を迎える(桂晴輝、桂月輝)
「桂三輝一門」誕生
フランス・パリにてフランス語落語を公演
- 2025年
「Rakugo on Broadway」6年目突入(2025年現在)
北京語(中国語)での落語公演を予定
インド・ムンバイにてヒンディー語での落語公演(予定)